インボイス登録で初めて消費税申告する方へ

10月から開始したインボイス制度。

この度、インボイス番号を登録することにより今まで消費税申告することがなかった事業者の方々も申告の必要が出てきます。

それではその自分が納めることになる消費税の計算はどのようにすればいいのか、それを今回は解説致します。

消費税の計算方法

消費税の計算方法については、従来本則課税簡易課税という2つの計算方法がありました。

本則課税については原則的な方法、簡易課税については基準期間の課税売上が5,000万円以下の事業者が適用できる簡易な方法です。

簡単に具体例を挙げてみますと

【例】

売上550万円(内消費税50万円)、仕入・その他の経費330万円(内消費税30万円)で建設業を営んでいるケース

【本則課税の場合】(売上の消費税と仕入の消費税の差額)

50万円ー30万円=20万円

【簡易課税の場合】(売上の消費税に業種に応じた一定の割合を掛けて計算)

50万円ー50万円×70%=15万円

このように計算方法によって、納める税額は異なります。

基準期間の売上が5,000万円以下であれば、どちらの方法かを選択できますので税額の有利不利や事務負担、設備投資の予定など様々なことを考慮してどちらを選択するか検討することになります。

届出の関係の話などもありますが、長くなるのでここでは割愛させて頂きます。

インボイスで始まった「2割特例」

インボイス登録で初めて消費税を納めることになる事業者は小規模な事業者の方々が多くを占めることになります。

そういった方々に特に事務負担、日々の記帳加えて消費税の処理をちゃんと行ってくださいというのはしんどい話です。

(10%と8%の区別、消費税がかかる経費かどうか、インボイス番号が記載されているかどうか…などなど)

そのためインボイス制度開始とともに、消費税の計算方法として2割特例という方法が設けられました。

こちらは上記の簡易課税と計算方法自体は同じで、上記の数字を元にしますと

【2割特例の場合】

50万円ー50万円×80%=10万円(売上の消費税の2割)

といった具合になります。

割合については簡易課税は業種により異なりますが、2割特例は全業種同じになります。

簡単に言ってしまえば、自社の売上の消費税額の集計さえちゃんと出来ていれば消費税の計算も出来るということになり、経費の支払いの方で消費税がかかるかどうかだとか相手先がインボイスを登録してるかどうかなどは確認する必要はないということです。

こちらの2割特例については事前の届出は不要で、申告書を作成する時に第一表の2割特例を適用しますという欄に◯を付記するだけで適用できます。

2割特例は期限付きの制度

2割特例の計算方法は令和5年10月1日から令和8年9月30日の属する課税期間まで適用できます。

属する課税期間という表現がややこしいですが、個人事業主の方であれば令和8年分(令和8年12月31日までの期間)までの申告で適用できるということになります。

もちろんこの間に基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、通常の課税事業者になるため2割特例は適用できなくなります。

【例】

令和5年課税売上1,100万円 →(2年後) 令和7年は2割適用不可

令和6年課税売上900万円 →(2年後) 令和8年は2割適用可

 

適用できる期間が終わったり、1,000万円を超えて2割特例ができなくなった場合には通常の消費税の計算方法に戻ることになりますが、その際には一番上に書いた通り本則課税か簡易課税のどちらにするかを検討しなければなりません。

簡易課税の場合は届出を行わないと適用できないため、届出失念などのリスクも考慮して自社の場合どちらの方が良いのか事前に決めておいた方が賢明かと思われます。

おわりに

今回は2割特例のお話をさせて頂きました。(ややこしくなるので細かいケースなどある程度は省略している部分がありますことをご了承下さい)

2割特例である程度事務負担が軽減されて楽になったとはいえ、やはり消費税関係は複雑です。

2割特例が適用できなくなった後のこと、届出、税額の有利不利など様々なことを考慮しなければいけない場面もありますので、そういった場合は一度専門家にご相談された方がよろしいかと思われます。

当事務所でもインボイス周りの相談は増えており、随時スポット相談でも受付けておりますので、なにかお困り事があればご相談下さいませ。

税金,税理士

Posted by 佐藤 真一